・・・あれは私が小学3年生の時の事。
学校の教室で平穏なひととき。
笑い声が響きあう、楽しい時間。
席に戻った私は、筆箱を開けた。
その時、私の目に飛び込んできた光景・・・。
整然と並んだ鉛筆や消しゴムたち。
その隙間を埋めるように、
小さな緑の物体。
「・・・?」
最初は何か分からなかったが、よく見ると
小さな
蛙の死体だった。
しまった!!
突然の事で事態が飲み込めず、
「きゃ~」
と言うタイミングを逃してしまった。
筆箱を開けてから数分が経過した後で、今更悲鳴を上げるのも馬鹿馬鹿しい。
しかもこういう物を仕掛けた犯人は、
人の驚く姿が楽しいに違いない。
だが、筆箱の中にずっとしまっておくのも気持ちが悪い。
・・・そんな趣味のある人だと誤解されたらたまったものではない。
意を決して、指で弾いてみることにした。
蛙には何の罪もないが、床に落ちていれば
掃除のときにゴミと一緒に処理されるだろう。
「えいっ!」
何と、見事に命中。
綺麗な弧を描いて、斜め前のA君の手提げ袋の中にナイッシュー♪・・・。
「あわわ・・・」
取り出そうにも、勝手にA君の手提げ袋を触ることはできないし
かといって事情を説明するのもためらわれた。
A君がその日のうちに手提げ袋を家に持ち帰るだろうと思っていた私。
自宅でA君が気付いたとしても、乙女ほど精神的ショックはないだろう。
そんな期待とは裏腹に、A君の手提げ袋は机の横に掛かったまま。
どうやら彼は、
学期ごとの区切り以外は教室に置いておく派
だったらしい・・・。
その後、席替えもなく私の斜め前にはA君の席。
手提げ袋に私の視線は釘付け。
もともとは私の筆箱に
蛙を入れた奴が悪いのだが・・・。
なんだかA君に申し訳ない思いでいっぱいだ。